A bolt out of the blue

競プロ、その他勉強したことなど

他人を評価すること

きっかけ

化学系の研究室では、割とどこでも師弟制度がある。特に有機化学の研究室で顕著だが、化合物を合成したりする実験ノウハウを完全に文書化するのは難しく、それを口伝する役割がある。

師匠は弟子の研究テーマの面倒を見たり、実験の方針を示したり、データの解析を手伝ってあげたり、プレゼンの添削をしたりする。 僕には2人、優秀な弟子がいた。そのうち特に手間のかからなかった2人目の弟子に、最後の仕事を頼まれた。

彼のここ1年の総括をして欲しいらしい。なんでもいいからフィードバックをくれとのことだ。

他人を評価すること

恥ずかしいことだが、僕は他人を評価するのが苦手だ。人には人の考え方があり、絶対の基準はない。良い評価ならまだいいが、僕の持っている枠に無理やり当てはめて悪い評価を下すのは、出すぎたマネに思えるのだ。

他の人はどうやっているのだろうか?

ランク付け評価

世の中の大抵の会社では、人事部が人物評価を担当している。例えば次のようなやり方がある。

fwd-march.com

評価軸を成果・能力・態度の3つに大別し、それぞれに小項目を設定して、点数をつけていく。点数の合計が評価となる。 ここで注意すべきなのは、各項目の点数の理由が明確である必要があるという事だ。評価される側も、評価に従って給与を払う側(役員)もこれがあると納得感が増す。

とてもロジカルだが、評価軸の選定と評価者のスキルが共に洗練されている必要がありそうだ。

上のサイトの評価項目例は面白くなかったが、色々と調べてみるとトヨタの評価軸は結構面白い。

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トヨタでは"人望"がなければ出世できない | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online

「粘り強さ」と「人望」という項目が興味深い。「粘り強さ」は、おそらく最近よく聞くGritのようなものだろう。

logmi.jp

成功するための要素は、能力でも努力でもなく、Gritであるという。Gritは、何かを最後までやり抜く力のことを指す。

物事に対する情熱であり、また何かの目的を達成するためにとてつもなく長い時間、継続的に粘り強く努力することによって、物事を最後までやり遂げる力

Gritを身につけるためには、「グロースマインド・セット」が有効であると主張している。

「グロースマインド・セット」というのは、スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック博士が発展させた考えで、内容としては「知能は生まれつき固定されたものではなく、後天性のもの、努力を重ねることによって変えることができるものである」という考え方

僕は昔は天才になりたかったのだが、最近は努力を継続することの重要性を意識し始めた。件の後輩はちょうどこのGritが高く、毎日筋トレしているらしい。「努力」との違いはよくわからないが、ちょうど次のブログは努力を続ける人とそうでない人の違いを語っている。

blog.tinect.jp

話が逸れた。

ここで取り上げたのは、評価する軸を定め、被評価者がそれをどの程度満たしているのか検証していくスタイルだ。 しかし、後輩をこのやり方で評価するのはどうも違う気がする。そもそもこのやり方は僕の苦手なやり方だったはずだ。

ちなみに、最近ではこのランク付け的なやり方をやめようという動きもあるようだ。

president.jp

低評価になった人物のモチベーションを著しく下げたり、ランク付けが目的化し機能しなくなりやすい、などの理由があるようだ。

「後輩 フィードバック」で調べてみると

検索上位で面白かった記事を並べてみる。

  1. 「具体的に」「目標のため」「実現できる」が大事。後輩にフィードバックをする1年生に知ってほしいこと

  2. 体系立ててフィードバックのやり方を述べているベルリッツの記事。「土台づくり」「課題共有」「アクションプラン」のプロセスで行う。他にも細かい重要な点を述べていて、「努力評価」「言動単位での評価(即時性)」なども重要だという。部下をやる気にさせる良質なフィードバックの3ステップ

  3. 「信頼感」「率直さ」「即時性」が大事。後輩・部下をやる気にさせるフィードバック【失敗した時編】 | HR NOTE

それぞれ3つずつ大事なことを述べているが、共通するのは「信頼」「具体性」「共有された目的」だ。 具体性はランク付評価を行う際にも重要であった。(会話の)目的が共有されていることはコミュニケーションでそもそも必要なことだ。

「信頼」は今更どうしようもない(フィードバックを要求するくらいだから信頼されていると仮定しよう)。 「即時性」は言うまでもない。会話を細かく覚えていれば別だが。

結局どうしたのか

人事評価におけるランク付け評価は、どちらかというとマネジメント側の都合を優先した評価の仕方に思える。 ここまで調べた結果、評価を受ける側の能力向上を目的にする場合に重要なのは、

  1. 点数をつけない
  2. 個別具体的で、解決策も含めた提示をする

であると感じた。

よって、後輩へのフィードバックは次のように行った。

  1. 後輩の言動をリスト化
  2. 後輩を見ていて感じたことをリスト化
  3. リスト内の個々の項目から、後輩の思考を予想
  4. 考えに共通するものを探し、より良い方向へ向けるにはどうするかを考えて述べる